Scene16 2/3

 それから毎日、放課後の公園で、モップに会った。
 この公園を通り抜けると、小学校への近道だ。だからクラスメイトたちもよく通りかかる。
 私は少し、不安になる。
 ――黒崎くんと一緒にいるところを見られたら、嫌だな。
 なんといっても相手はあの黒崎くんなのだ。間違いなくへんな噂が流れる。そういうのが、とにかく恥ずかしい年頃だった。
 でもモップのところにいる時に、黒崎くんと会うことはなかった。
 彼がモップを見捨てたわけではない。それは間違いない。
 モップの家は、毎日、モデルチェンジしていた。
 初日はただの段ボール箱だったのに、2日目には即席の屋根がついていた。3日目になると、段ボールで器用に、犬小屋が作られていた。
 4日目には雨が降った。5日目にたわんでいた段ボールの犬小屋は、6日目に新築された。新築の犬小屋には、切ったビニール袋が貼りつけられ、簡単な防水加工が施されていた。
 私は毎日、モップに餌を届けながら、その犬小屋を見て笑った。
 黒崎くんが、あの不機嫌そうな表情で、一所懸命段ボールの犬小屋を作っているのを想像すると、なんだか明るい気持ちになる。目には見えないけれど、そこには間違いなく、暖かなものがある。
 私は、その犬小屋に、「すごくよくできてるね!」と書いた便箋を残してみた。ずいぶん時間をかけて選んだ、犬のイラストがついた便箋だった。
 翌日にはそこに、「4時間かかった」と書き残されていた。それをみて私はまた笑った。


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