Scene?? 23:00〜


 まさか、と思った。信じられなかった。
 そわそわとバイトを済ませた私は、暗い夜道を走る。
 最寄りのコンビニに駆け込んで、雑誌コーナーに直行する。

「ホントにまた始まるの!?」

 荒れた息で、おそるおそる、私は一冊の少年誌を手に取った。


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まえがき

「3D小説」のページに、ようこそ!

 3D小説とは、インターネット上で公開されている小説です。
 岡田アユミと黒崎リョウ、2人の視点で描かれた「小説パート」と、少年ロケットと読者たちがTwitter上でやりとりする「現実パート」で主に構成されています。
 通常のインターネット小説とは違っている部分がいくつかありますが、あくまで「小説である」としてお読みいただくのが、もっとも適切だろうと思います。
 下記の「3D小説を読む」をクリックすると、本文1ページ目に移動します。
 そこから、「全編」あるいは「共通」とあるリンクを辿れは、余すところなく3D小説をお読みいただけます。
  3D小説を読む

★イベント「3D小説」
 イベントとしての3D小説は、企画責任者である少年ロケットがグループSNEのTwitterアカウント上で、5月2日〜5日に開催いたしました。
 このブログには、「小説パート」の一方、「岡田アユミ視点」の物語を掲載しています。

★もくじ
「3D小説」全体の目次はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/RocketJump01/20130510/p2

★ページリンク
 各ページの下部には、「back←」、「→next」と書かれたリンクがあります。このリンクに併記されている言葉の意味に関しまして、説明いたします。

全編
「小説パート」と「現実パート」をまとめ、この企画の全体を追っていただく方用のリンクです。
 このリンクで企画全体をご覧いただくことを、強くオススメいたします。

現実
 当ブログに掲載されている、Twitter上でのやりとりのみを追うためのリンクです。

岡田
 岡田アユミ視点の物語のみを追うためのリンクです。

黒崎
 黒崎リョウ視点の物語のみを追うためのリンクです。
 
共通
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 当ブログに掲載しているtweetは、すべて発言者様の許可を得ています。
 もし転載しているtweetに問題がありましたら、誠にお手数ですが、該当するご自身のアカウントからグループSNEのtwitterアカウント(https://twitter.com/GroupSNE)にご連絡いただけますようお願いいたします。
 tweetの文面には一切手を加えておりませんが、読みやすさを考慮し、発言の順序を入れ替えさせていただいています。

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 許可を頂け次第、本来のものに差し替えさせていただきます。

★その他
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 今後、もし「3D小説」に関する動きがあれば、このアカウントでアナウンスされるかもしれません。
 少年ロケットはしばらく眠っていて、当分はなにも呟かないらしいので、お気軽にフォローお願いいたします。


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Chips - no.49「岡田アユミのその後」

 本名、岡田歩。年齢よりも幼く見える、目の大きな女性。

 一連の事件の後、岡田歩は待ち続けていた。彼が帰ってくるその日を。今度こそ、もう二度とあのハートが欠けることはなくなる時を。
 苦しいことではなかった。
 一度も疑うことのなかったあの約束が、いよいよ叶うのだと確信していた。
 そしてそれは、当たり前に、あの公園でまた叶えられた。

 現在、彼女はある小さな事務所に就職している。その事務所は京都にある。
 住居はあの公園の近くの、室内でペットを飼うことができるマンションだ。
 すぐ近くに、彼も暮らしている。

 ペット可のマンションを探したのには理由がある。
 ある女性から、ポメラニアンを1匹、譲り受けることになったのだ。
 黒と白、斑の毛を持つポメラニアンだ。
 名前はモノ。彼が決めた。

「モノクロの、モノ?」
「それもある。あとは、消しゴムにもあっただろ、モノって」
「消しゴム? どうして?」
「昔から好きなんだよ。モップとか、消しゴムとか」

 照れたような笑顔で、彼はそう言った。
 今では、2人と1匹で、あの公園を散歩するのが日課になっている。

 すべては、あの日に起きた、とんでもない奇跡のおかげだ。

 彼女にはずっと探していたものがある。
 自分の居場所。
 名前を呼ばれることに、心から喜べる場所。
 ようやくそれが手に入ったのだと感じる。
 毎朝、目を覚ます度に、幸せな気分になる。
 この幸福な場所を守り続けようと、彼女は強く誓っている。。


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Chips - no.48「白黒模様のポメラニアン」

 モップの孫にあたるポメラニアン
 背の高い青年と、大きな目の少女に引き取られた。

 名前は「モノ」。ハムが大好物。
 大型犬には威勢よく吼えるが、猫を見ると怯え、2人の背後に隠れる性格。


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Chips - no.47「モップのその後」

 白いポメラニアン。オス。名前を2つ持つ。そのうちの1つが「モップ」だ。
 モップは老婆に引き取られた後、やがてメスの黒いポメラニアンと結ばれ、子犬を3匹授かった。

 現在、モップと黒いポメラニアンは老犬となり、老婆と静かに暮らしている。
 かつて子犬であった3匹は、生まれて間もなく老婆の知り合いたちにそれぞれ引き取られ、うち1匹は飼い主のもとで、さらに1匹の子犬を産んだ。
 その子犬に、最近、貰い手が見つかった。
 背の高い青年と、目の大きい少女のカップルだ。
(Chips - no.48「白黒模様のポメラニアン」に続く)


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Chips - no.45「愛の力」

 不確かなもの。
 誰もが信じていて、誰もが疑っているもの。
 証明できないもの。
 証明したいもの。
 証明できたとき、奇跡のような世界が訪れるもの。

 それは、ある日、ある時、ある人々の力により証明され、この物語をハッピーエンドへと導いた。


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Chips - no.44「ある出会い2」

 西野原桜は、「彼女」のランニングコースを、ゆっくりと歩いた。
 かつて「彼女」と暮らしていたマンションの前から出発し、三ノ宮駅の南側に出て、そこから東へ。
 消防署の前を通り、生田川を渡り、さらにまっすぐ。
 地下に阪神春日野道駅がある辺り、有名な回転寿司チェーン店の脇のボードウォークに入り、南下した。
 ボードウォークから小学校のグラウンドを眺めて、さらに進むと、海岸に出る。
 海沿いを東へ。
 右手にみえる摩耶大橋は、運搬トラックが多く通っている。その、『H.W.L.上.18M』と書かれた表記のちょうど向かいに、奇妙な男がいた。
 二十代半ばほどの男だ。
 テンガロンハットのような形の麦わら帽子を被っている。奇妙なファッション。彼は絵を描いているようだった。目の前の、狭い海の絵を。
 彼の前を通り過ぎようとした時、声を掛けられた。
「あの、すみません」
 どこか怯えたような、小さな声。
「もしかして、貴女、笑うと左目が細くなる女の人を知りませんか?」

 聞けば、彼は以前――もう4年も前――に、「彼女」と一緒に走る西野原を目撃していたのだという。
 2人は、ほんの短い間、会話を交わした。
 こんな会話だ。

「ただ、もう一度だけ、彼女に会いたいんです。だからずっと、ここで絵を描いているんです」
「あの子が好きだったの?」
「ええ、まぁ。別に彼女の何を知ってるわけでもないんですけど。なんとなく、勝手に彼女が、オレの希望みたいになっちゃって」
「そう」
「でも、きっと彼女にしてみれば、迷惑でしょうね」
「どうして?」
「彼女には素敵な恋人がいるみたいだから。とっても幸せだって、言ってました」
 西野原桜は泣かなかった。
 そっと彼に告げた。
「大切なものを失くしたの」
 彼は怯えたように尋ねる。
「恋人、ですか?」
「ええ。4年前に。そして今度は、憎むべき敵を失くした」
「それが、大切なものですか?」
「私も気づいてなかったけど。思えば4年間、あいつらのことばかり考えていたから。きっとあの子のことよりも長い時間」
「悲しいんですか?」
「そんなわけないじゃない。すっきりしたわよ。すがすがしい」
 狭い海の上、空はよく晴れていた。
 雲のない青空は、すがすがしく、でもぽっかりと開いた大きな穴のようでもあり、なんだろう、奇妙に泣きそうになる。そう西野原桜は感じた。
「これからどうするんですか?」
 と絵描きが言った。
「出頭するわよ」
 と西野原桜は答えた。
「出頭?」
「ええ」
 少しだけ笑って。
「私、つい最近まで、トレインマンだったの」
 西野原桜は海岸を後にした。

「彼女」のランニングコースは続く。
 久しぶりに、本当に久しぶりに、「彼女」の左目が細くなる笑顔を思い出して。
 記憶につられて、西野原桜は微笑んだ。
 ――私はこの4年間で、いくつもの間違いを犯してきたけれど。
 にも関わらず、どこかの神様が、私まで救ってくれたのだ。
 そう、西野原桜は感じた。


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