Scene5 23:30〜 1/3

 時間の感覚がなくなっていた。
 ずいぶん長く走っているように思う。でも本当はきっと、まだ5分も経っていない。ジーンズでよかった。スカートは走るための形をしていない。
 今、自分がどこにいるのかもよくわからなかった。
 どこか非現実的なところ。暗く細い路地だ。でも先に街灯の明かりがみえる。そこに現実があるのだと思った。
 私よりも一歩先を走っていた大久保が、まず路地を抜ける。と、同時に小さな悲鳴が聞こえた。
 思わず身体がすくむ――直後、衝撃を感じた。まずは正面、次に両手と腰に、強い痛みが広がる。
 遅れて、自身が何かにぶつかり、背後に倒れたのだと気づく。
「なにやってんだよ!」
 と大久保が叫んだ。
 街灯の明かりが、辺りに散らばる青を照らしていた。

 いくつもの青。
 それは海だった。


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