Scene35

 ベレットが走り去る。
 私は長い間、その先を見つめている。
 ふいに、ポケットの中のスマートフォンが震えた。
 錯覚じゃない。――どうして?
 取り出す。
 バッテリーが切れているはずのそれは、でもモニターが輝いていた。
 表示されているのはメールフォルダだ。新着メールがある。
 簡潔な文面。

 お前ら、愛の力って信じる?

 私は勢いよく涙を拭いて。
「当然」
 思い切り強く、黒いハートの欠片を握りしめた。


back← 全編 →next
back← 岡田 →next



















.