Scene30 12:50〜

 疲れていた。とても。
 モップの抱き心地を思い出す。ふわふわの見た目に反して、意外にごわついた感触。
 隣には黒崎くんがいる。彼のぶっきらぼうな表情。でも、よく見ると口元が、僅かに微笑んでいる。
 私は、どうすればいいんだろう?
 私は、どうなるんだろう?
 ――助かるに決まってるさ。
 彼に、そう言って欲しかった。
 胸元に手を伸ばす。やっぱり、ペンダントなんてない。

 私の足がゆっくりと動く。
 ほかにはどうしようもなくって。
 記憶の中の、一番深い部分にある道を進む。


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