Chips - no.21「彼女の過去」

 女性警官、西野原桜は某体育大学を卒業後、警察に就職。
 ある町で「笑うと左目が細くなる彼女」と同居し、満ち足りた生活を送っていた。
 だが「彼女」はある日、組織によって、一面記事のためだけに無残に殺された。
 その日から西野原桜の目的は、復讐になった。

「彼女」を殺した殺人鬼について独自に調査を始めた西野原は、少しずつ組織の情報を手に入れていった。いや、それは情報と呼べるようなものではなかった。僅かな断片を執拗な想像力で繋ぎ合わせ、真実に辿り着いた。
 結果、殺人鬼が複数いると予想した西野原は、そのうちの1人が起こしていると思わしき事件の発生パターンを分析し、中心地である京都に転勤願いを出した。

 やがて殺人鬼の正体を突き止めた西野原がまずしたことは、交渉だった。彼女の復讐対象は目の前の殺人鬼だけでなく、組織すべてに及んでいた。
 組織に入りたいと、西野原は告げた。

 組織はもちろん、西野原を疑っていた。だが同時に、警官である彼女は魅力的でもあった。
 常に「切り捨てる準備」を怠らない組織は、結局、西野原を受け入れることに決めた。もちろん欠片の信用もないまま、すぐに切り捨てられる手駒として。

 西野原桜は「彼女」がそんなことを望んでいるはずもないと知っていたが、自分を抑えることができなかった。
(Chips - no.28「笑うと左目が細くなる彼女」に続く)


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