Scene23 10:30〜 5/5
しばらく、彼女の話に圧倒されていた。
でも、やがて疑問がわき上がる。
まただ。「どうして」。でも気になった。
「どうして、こんな話を、私にするんですか?」
必要ない。むしろ彼女には不利なはずだ。
きっと私は、これから警察へ行って。
今、聞いた話も、全部伝える。
「教えて欲しいのよ」
彼女は言った。
「昨日の夜。なぜ貴女は、あのパスワードを知っていたの? あの、PCのパスワード。私だって知らないのに」
尋ねられても、困る。
なぜわかったのか、わからないのだ。私にも。
彼女は僅かに、テーブルに身を乗り出した。
「ねぇ、お願い。教えて。貴女は何を知っているの?」
「わからないんです」
正直に答える。
「知らないアドレスから、メールが届いて。そこに書いていた通りに打ち込んだだけです」
彼女は不満げだ。
「誰がそんなことするっていうのよ?」
わからない。そんなの。わかるわけない。
神さまのいたずらだとしか思えない。
「正直に教えて。あいつの何を知っているの? あいつは、きっと――」
その時。
リビングに、携帯電話の着信音が鳴り響いた。
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