彼はどこか誇らしげに、そのジオラマを眺めていた。
私たちは2人で、建物を指さして。
――オレ、その本屋よく行くよ。立ち読みばっかだけどさ。
――あ。あっちの雑貨屋さんで、可愛い消しゴム見つけたんだよ。
本当はもうお互いが知っていることを、ひとつずつ説明し合った。
あれから10年経って、私は一人、ジオラマを見下ろしている。
ガラスケースに入ったジオラマは、薄く埃を被っていた。
私たちの町のジオラマ。この町が私たちのものだった頃の、ジオラマ。
懐かしくて胸が熱い。
私たちの小学校。私たちの通学路。私たちの思い出。
その真ん中に公園があった。
いつか、必ず、彼と毎日歩くことになる公園だ。
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