Scene7 ??:??〜

 揺れている。ずっと。
 目が覚めても、意識を取り戻した気がしなかった。妙に眠い。全身がだるかった。頭の中心に、重い疲労感が居座っている。
 目を開いても何も見えない。どうやら目隠しをつけられているようだ。手も動かない。背後で、縄よりも硬い何かに束縛されている。わかるのは振動と、あとは音だけだ。エンジンの音。きっと、私は車の中にいる。
 エンジン音に混じって、声が聞こえた。
「危なかったわね」
「何が?」
「時間よ。リミットいっぱい」
「そうでもない。デスクは優秀だ。驚くほど早く一面記事を差し替える」
「優秀なのは印刷屋じゃない?」
「そうかもしれない。どちらでもいいさ」
「次の一面は決まってるの?」
カーネルサンダースを5、6人ほど殺す予定だ」
「またジョーク系?」
「殺人ばかりじゃ、みんな飽きるだろ」
「そうね。でも――」
 頭の中の疲労感が膨らむ。
 振動が妙に心地いい。自身の意識が、遠のいていくのを感じる。縫いつけられた影になって、歩み去っていく自分の背中を眺めているような気分。
「やっぱり、人を殺すからトレインマンは成立するのよ」
 その声はずいぶん細やかで、すぐにまた、何も聞こえなくなった。


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