Scene6 23:45〜 3/3
銃とトレインマンに挟まれて、息が苦しい。
胸がどくんどくんと鳴っていた。一体、何が起こっているんだ。私は何に巻き込まれてしまったんだ。ただ普段通りにアルバイトを済ませて、ちょっとマンガを立ち読みしたくて、コンビニに寄っただけなのに。
とにかく、逃げなければいけない。考えろ。考えろ。考えろ。一体、どうすればいい?
あの女性警官はトレイマンの仲間なのだろうか。細い道路に抜け道もない。さすがにここからでは叫んでも、声は交番まで届かないだろう。通行人でも現れないだろうか? 見るからに人通りの少ないところだけど、この先にはコンビニだってある。
とにかく、諦めちゃいけない。何か状況が変わったら――
「あーあ」
妙に、気の抜けた声が聞こえた。
「ゲームオーバーか。上手くいきそうだったのにな」
大久保だ。彼は、ズボンのポケットに手を突っ込んで、
「岡田。お前、もうダメだわ」
黒く、四角い。スマートフォンくらいの何かを、私に押しつけた。
熱い。そこで弾けた高温が、衝撃になって全身を走る。不意に薄れていく意識で、考えた。――昔からこうだ。
昔から私は、勘が鈍い。
だから、あの時も、彼がいなくなってしまう日まで、なんにも気がつかなかった。
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